自由診療のリスクと副作用

自由診療にかかわる治療等に関するリスク、副作用について

まず、当院における自由診療には、インプラント治療、特殊な歯周外科治療、矯正歯科治療、補綴治療等があげられる。

インプラント治療については、インプラント埋入手術、2次手術、骨増大術が含まれる、骨増大術には、GBR法(歯槽骨再生、増大手術)、サイナスリフト(上顎洞底上)などを含むが、まず一般的に抜歯を含む歯科における外科処置は、リスクとして術前・術後の疼痛、出血、腫脹が起こる可能性が考えられる。生体の防御機能の関係から、個人差があり、程度の差は認められるが、ある程度は避けられない部分がある。その他に、組織内を走行する神経に損傷が与えられると、術後に麻痺などの深い症状が現れる場合が考えられる。
また、術中・術後の細菌感染により、創部が炎症を引き起こすことも考えられる。
これらの不快事項に関する対策は、術者側による術後管理と、患者自身による術後注意事項履行が鍵となり、万一不測の事態が起こった場合には、別に術後の対応を最大限徹底して行うことにより、大事には至らない場合が多いと思われる。

歯周外科治療には、歯周病根治術であるフラップ手術と、歯肉移植等を含む歯周形成外科に分類され、フラップ手術には切除療法と、歯周再生療法に分類される。外科処置にかかわるトラブルは上記と一緒であるが、歯周病患者の場合、術前に口腔清掃状態不良の場合が多く、術後の口腔管理不徹底の場合、術後感染、創部の治癒不全などのトラブルが起こる可能性がある。歯周再生治療ではエムドゲイン、リグロス(厚生労働省認可済)等の成長因子、骨移植材、バリアーメンブレン等の特殊な歯科材料を併用する場合があるが、これに関する副作用などの報告のない薬剤を使用しており、当医院30年間の歴史の中でも問題は確認されなかった。ただ、過去に別の医療機関において、狂牛病の感染した事例などが厚生労働省の報告の中に認められるので、使用薬剤については個々に説明し患者さんの同意を得ることが重要となる。
歯周形成外科には、露出歯根被覆術、歯槽堤保存術(ソケットプリザベーション法)、歯槽堤増大術(歯肉・歯槽骨増大術)、臨床歯冠長延長術、歯間乳頭増大・保存術等があげられるが、いずれも形態的、審美的改善を目指す外科処置であり、一般に歯肉移植術や、骨移植術、歯肉組織移動術などを行うものである。外科に関するトラブルは上記同様であり、比較的繊細な手術・手技での治療であるので、特に術後管理の徹底が求められる。
歯周治療全般に、歯周病の歯には歯根に歯石が付着している場合、それを完全に除去する必要があるが、技術的に歯根表面をこすり、多少削られてしまうため、それに伴う知覚過敏、冷水痛が一時的に発生することがある。これについては、術後のメインテナンスにより、知覚過敏処置、薬剤塗布などで対応することとなる。

矯正歯科治療におけるリスク、不快事項とは?

矯正治療には、ブラケットという小さな装置を直接それぞれの歯に取り付け、アーチワイヤーを使用して歯を移動させる、フルブラケットシステムと、インビザラインと呼ばれる透明レジンで作成されたアライナー(マウスピース)だけで歯を動かすシステムの方法が存在するが、いずれも各歯根が歯槽骨の中を移動し、骨吸収と骨添加を繰り返しながら歯が一定方向に動かす仕組みであるため、矯正移動に伴う痛みを感じる場合がある。痛みの程度は、個人差があるものの、十分耐えられるレベルといわれる。特に、各アポイントの調整を行った直後の2~3日間ほど、食事中に咬合痛として感じることが多いと言われている。
矯正治療中は、特殊な装置が口腔内に装着され、口腔清掃がしにくい時期を過ごす事となり、ブラッシンング不徹底の場合、新たな虫歯や歯周病発生の原因となりうる。
報告によると、強すぎる矯正力や硬い骨に歯根が当たって歯根が吸収して短くなってしまうトラブルの可能性があるため、特に成人矯正の場合注意が必要である。

補綴治療における問題点は、何か?

自由診療:精密補綴治療には、セラミックインレー、クラウン、ブリッジ、ラミネートべニア―等のクラウンブリッジ(歯冠補綴治療)と、義歯(入れ歯)等の可撤式入れ歯治療に分類される。保険自費にかかわらず、クラウンブリッジにおけるトラブル、不快事項とは、そもそもより正確精密、安心安全、審美性の追求、患者さんの個別な要求に対応するという趣旨で行われるべきである。よりトラブルが起きないような丁寧な治療行為が自由診療の意義であるが、時に予期できない問題が起こることがありうる。
セラミック歯冠補綴のトラブルは、まれにチッピング(部分的に欠けてしまうこと)脱離(不意に外れてしまうこと)、非常に強い外傷力による歯根破折(歯の根が折れてしまうこと)、顎位の変位による顎関節症発症、咀嚼障害(よく噛めないこと)、審美的な不満(仕上がりの美しさに対する患者さんの不満)などが考えられる。時に、心無い別の歯科医が行った補綴治療が不満で、当医院に転院してセカンドオピニオンを求められる事例は多く認められる。
義歯補綴の場合も同様で、しっくりこない、よく噛めない、すぐに外れてしまうなどの不良補綴治療で、当医院に転院する場合が認められる。
義歯補綴におけるトラブルは、義歯不適合、義歯破損、審美障害、咀嚼障害、違和感などが考えられる。また部分床義歯の設計不良から、残存歯に過重負担が強く働き、維持させる歯が抜歯に至ってしまう場合も報告されている。

精密根管治療における問題点

マイクロスコープを使用し、残存歯質量がない場合には、マトリックス(コンポジットレジン等で根管治療がやりやすいように歯冠部を事前に構築する事)を行い、ラバーダム防湿下で清潔な環境にて行う根管治療であるが、世間には初めから他の医院で残せないから抜歯が必要と診断され、セカンドオピニオンで来院する患者さんが多数来院する。
一般に根管治療には、初めて虫歯が深く進行して歯髄炎になり、抜髄(神経を除去する治療)と、感染根管治療(すでに抜髄治療が終了しているが、根管内が不潔になり、根尖病変などに進行するケース)に分類されるが、抜髄の場合には、不適切な治療の場合、一部炎症のある歯髄組織を取り残し、術後の痛みが継続する事や、複雑な根管に対しパーフォレーション(穴をあけてしまった場合)、レッジ(段差をつけてしまい、再治療困難にすること)不良根管充填(一般に根尖部まで緊密に、ガッタパーチャで閉鎖できない場合)などが考えられる。そのような場合、再度精密根管治療で対応できる場合と、前医が行ったトラブルの程度が大きすぎる場合には再治療困難となり、残念ながら抜歯せざるを得ないことが考えられる。感染根管治療は、再根管治療とも呼ばれるが、完全な抜髄治療が行われていない場合に、再治療を行うことであるが、根管の閉鎖(石灰化)、パーフォレーションの程度が大きい場合、根管内の歯質を過大に形成し、残存歯質量は不足する場合、歯根破折(ひびが入って、折れている場合)などは一般に保存は不可能で、抜歯に至ることがある。
実際に保存困難な条件の(他の医院で抜歯判定を受けた根管治療)残存歯の再治療を希望して来院する患者も多く存在するが、説明をしても無理を承知で再治療を希望することがある。このような場合には、最大限の努力を行っても、技術の問題ではなく、条件不良という理由から、最終的に抜歯に至ることがある。

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